クリスマスイブの電話
ある年のクリスマスイブ。
今日は家族もケーキを用意して待っているだろうから、
早めに帰ろうかと思っていると、
プルルルル・・・・
携帯に一本の電話が入りました。
「ハイ、近藤不動産のシダです。
お久しぶりですね。どうかしましたか?」
数年前に分譲住宅を購入していただいたSさん、
かなり慌てた様子で、
「シダさん!お久しぶりです。
お風呂のドアが取れてしまって・・・」
風呂のドアが取れた?
「どういう状況だったんですか?」
「お風呂に入ろうとしてたんですが、
ドアの端に子供のおもちゃが挟まっていたみたいなんです。
それに気付かずに勢い良く閉めたら、
ドアが外れて、お風呂側に倒れてきちゃって・・・
旦那も出張でどうしたらいいかわからず、
シダさんに電話しちゃいました。」
こんな寒い日に、まだお風呂に入れてないんだろうな。
でも、今日は日曜で監督は休み。この時間じゃ、すぐに職人さん動けないか・・・。
「それはお困りですよね。わかりました。
直せるかどうか分かりませんが、とりあえず行ってみます!」
と答え、すぐに会社を出ました。
10分くらいで現地に着くと、
「ああ!シダさん。
こんな時間に来てもらってすみません。」
「いやいや、気にしないで下さい。
まだ、直せるかどうかも分からないんですから。
まず、見てみますね。」
・・・・
見事にバタンと倒れている。
起こしてみて、枠に当て押してみても、入らない。
勢いで着ちゃったけど、
どうやって、はめるんだろ??
・・・・
元工事監督の上司なら知っていると思い、電話してみると、
「メーカーは?
あ~、それなら吊元側の上に
ついているレバーを引きながら、
ドアを開いた状態で、枠に押し付けてみな!」
言われたとおりにやってみると、
カチャン。
すんなり入って、
「Sさん!直りました!」
実は、来て何にもできないんじゃかっこ悪いと思って、
結構プレッシャー掛かってました。
「ありがとうございます。
クリスマスイブなのに、こんなことまで
営業のシダさんに頼んじゃってすみません。」
「引渡した後でもSさんの担当は私です。
毎回、お力になれるか分かりませんが、
困ったらいつでも電話下さいね。
それじゃ、これで失礼します。」
と帰ろうとすると、
「シダさん、これ!
メリークリスマス!」
と言ってSさんは、
缶ビールと、おつまみを渡してくれました。
お客さんに感謝も貰って、
その上、クリスマスプレゼントまで貰ってしまった、
すてきなクリスマスイブでした。